Interview成約インタビュー

業種の垣根を越え、遠く離れた岩手と京都のご縁を結んだ事業承継型M&A

業種の垣根を越え、遠く離れた岩手と京都のご縁を結んだ事業承継型M&A
譲渡企業
株式会社ライズコーポレーション取締役社長 柳田 進 様
本社所在地
京都府京都市
事業内容
プリント基板設計
譲渡理由
後継者不在
譲受企業
イーストライズ株式会社代表取締役社長 花塚 勇三郎 様
本社所在地
岩手県盛岡市
事業内容
業務及び組込のアプリケーション開発
譲受理由
商圏の拡大及び人材採用
株式会社ライズコーポレーションは、京都に拠点を置くプリント基板設計の会社だ。創業者である柳田進氏は『ひとを大事に』という経営理念のもと関わる全ての人を大切に業歴34年の実績を積んできた。65歳での引退を決意するが、後継者不在であることからM&Aを選択する。そんなライズコーポレーションを譲り受けたのは、人と人とのご縁を大切にされている岩手に本社を構える業務及び組込のアプリケーション開発を行うイーストライズ株式会社だ。異業種ながら遠く離れた京都と岩手のご縁がどのように結ばれたのか、ライズコーポレーション取締役社長 柳田氏とイーストライズ代表取締役社長 花塚氏に話を伺った。

回路設計エンジニアと共通言語で会話をするプリント基板設計、ライズコーポレーション

まずは柳田さん、御社の事業内容と設立の経緯を教えてください

柳田氏:
ライズコーポレーションはプリント基板設計CADの運用サポートを目的として1990年9月に設立しました。当時のプリント基板設計CAD市場は創世記から成長期に向かっている過渡期で、ライズコーポレーションはIBMの子会社であるCADAM社がグローバルに展開していたPCADの日本市場をメインターゲットとして事業を開始しました。しかし、残念ながら当初の計画通りに進まず、2年後にプリント基板設計、製造販売を開始し、現在に至ります。これらのボードビジネスを展開して今期で35期目を迎えております。ライズコーポレーションでは回路設計エンジニアと共通言語で会話ができることを重要なコンセプトにしています。この共通言語とは齟齬の無いように意思・意図を理解し、すれ違いのない会話を行うことを指します。会話とは、指示を受けて受動的に作業するのではなく、問題点や課題点などを能動的に発信するということです。これらの感性を営業窓口から設計エンジニア、さらには同じ設計を担当するパートナーと育みながら実践するところがライズコーポレーションの1番の強みであると思っています。

どのような思いから今回のM&Aをご決断されたのでしょうか?

柳田氏:
6、7年前から65歳を迎える決算期に引退することを目標に準備を進めておりました。私は顧客との信頼関係を深め、その関係性からネットワークを広げるという営業スタイルのため、各取引先の事業が変遷していく中で、なかなか自社事業の拡大ができず、業績の浮き沈みが激しい状態が続きました。このままではライズコーポレーションが老化して、衰退していくだけだと思い、営業力を強化し、若い人材を育て、組織化ができ、ライズコーポレーションを活かしていただける方にお任せするのがいいのではないかと思い、M&Aを選択しました。

ペアキャピタルにお任せいただいた理由を教えてください

柳田氏:
以前からM&Aを検討していたので、情報収集のために税理士や他の仲介の方とも面談をしていました。そんな時に、北條さんからお電話をいただきました。具体的な話しをもってのアプローチであったのと、ニッチな業界にも拘わらず業界や弊社のことを研究されていたので、面談したいと思いました。M&Aにかかるコストの面は選ぶ上でポイントの1つでした。ペアキャピタルは着手金がいらないこと、基本合意書を締結してからの報酬であることが明確だったことなどが決め手の1つでした。正直、コストはもう少し下げたいという思いがありましたが、北條さんが信頼できたことと、押しと引きのバランスが良かったので決めました。また、ライズコーポレーションの企業概要書が本当に的確に資料化されていたのもポイントです。

お相手探しで大切にされたポイントはありますか?

柳田氏:
営業力の強化と、若い人材の育成、組織化をお任せできることが1番大切なポイントとして考えていました。私自身が不得手の分野で、ライズコーポレーションが持っていないものですので、それらを構築できる可能性を持っているというのが大事なポイントでした。また、その上で雇用および既存のお客さんへのサービスを継続し続けられるということも大切にしていました。

イーストライズをお相手として選ばれた理由、決め手を教えてください

柳田氏:
花塚社長と初めてwebで面談させていただいた時に、非常にバイタリティがあり、ポジティブで周りを元気にできる方だと感じました。ライズコーポレーションの経営理念に『ひとを大事に』というものがあり、従業員、顧客、取引先、事業パートナーを含むライズコーポレーションに関わる全ての人を大事にしています。イーストライズは言葉だけではなく、評価する仕組みを以て従業員を大切にされていて、人材育成にも力を入れておられるところが大変魅力的でした。さらに各地に支社やサテライトオフィスなどの拠点をお持ちになっており、その営業ネットワークも魅力でした。そしてソフトウェアを主軸にされているところは、ライズコーポレーションに欠けている業務のデータベース化やシステムによる効率化、信頼性への力添えをいただけるんじゃないかという期待もございました。

成約に至るまでに印象深かったエピソードはありますか?

柳田氏:
何と言っても対面でのトップ面談を予定してからなかなかお会いできなかったことですね。1回目は台風や地震の影響で中止に。2回目は花塚社長が盛岡から京都までお越しいただいたにも関わらず、私の体調不良で当日中止に。M&Aへの決意が揺らぐことはなかったのですが、さすがに花塚社長に申し訳ない気持ちでした。その後、私が盛岡に出向き、三度目の正直でようやくお会いできました。その際には私のルーツが盛岡であることをお話しするきっかけになり、これも一つのご縁だと感じました。

ご従業員様に本件の開示をしたときの反応はいかがでしたか?

柳田氏:
従業員や家族には当日まで話していませんでした。ただ、従業員には日頃からライズコーポレーションの課題や、今後の展望について話していたり、今後様々なアプローチを検討していることを伝えていたりしたので、ある程度予想はしていたのかもしれません。イーストライズの紹介や私の想い、M&Aの目的を伝えると問題なく受け入れてくれました。

M&A後のご状況を教えてください

柳田氏:
今のところ特に大きな変化はないです。ライズコーポレーションは株式会社でしたが、今まで『個人的な活動』という感じだったと思います。今後は組織としてシステマティックに成長していけることを期待しています。そのために準備、引継ぎをしています。目に見えて変わったところで言えば、今まで給料明細を紙で出していたのですが、メールで出すようになるなどDX化が進みました。

今後の展望を教えてください

柳田氏:
私自身は引継ぎをして、引退を予定していますので、ライズコーポレーションが今後自律成長していくことを望むだけです。引退後は何をするのかとよく聞かれるのですが、社会変革の最先端で傍観者でありたいですね。30年ほど前にインターネットが流行りだして、世界に大きな変革がありました。そして今、次のテクノロジーの転換期にあると思っています。これからの変化は今まで以上にハイスピードで起こるだろうという気がしていて、非常にわくわくしています。
あとは、趣味のヨットを楽しみたいですね。3月に行われるメルボルン大阪のダブルハンドヨットレースに所属するチームのメンバーが参加予定です。今回私は陸上サポートをしますが、引退後は時間もできるので、そういった趣味を楽しむ時間ができそうです。

地方と東京をつなぎ、業務及び組込のアプリケーション開発を行うイーストライズ

それでは花塚社長、御社の事業内容、設立した経緯を教えてください

花塚氏:
IT業を志す地方の若い世代の雇用の受け皿になれればと思い、2013年5月30日に立ち上げました。設立当初は、通信技術やソフトウェア開発技術などが発展してきている時代でした。その中で、いつかリモートで開発できるような時代が来ればいいと思っていましたが、地方というだけで同じ経歴があるにも関わらず、首都圏の案件単価の1/10くらいまで減ってしまうんです。首都圏の高付加価値の案件を地方のリソースを使って、地方で開発することができればという思いがありました。昨今、働き方改革や新型コロナウィルス感染拡大で、テレワークが推奨されるようになりましたが、イーストライズはその何年も前からリモート開発を始めています。拠点を設けて、入退室管理システムやカメラを導入することで環境を整えています。新型コロナウィルスの感染拡大で様々な業界、業種が大変な面もあったと思いますが、先駆けて行っていた我々はこれが追い風になりました。その場しのぎのテレワークの企業もある中で、差別化を図るために在宅システムを導入し、在宅であっても出社と全く同じ環境を実現しています。こうやって環境を整えてきたことで、首都圏の高単価な案件も本社の岩手、仙台、大分などを中心に地方でのリモート開発を叶えています。

今回のM&Aの目的は何だったのでしょうか?

花塚氏:
どんどん拠点拡大やサテライト展開を進めていきたいと考えていた中で、企業を買収することにも興味がありました。ライズコーポレーションを譲り受ける前に2社のM&Aを経験しました。異業種であっても顧客を補完できるような企業を譲り受け、大成功したんです。この成功事例を基にやっていけばもっと拡大し、売上も良くなるのではないかと思いました。また、もともとイーストライズは京都に拠点があり、その京都のオフィスをさらに拡大できればという思いもあり、京都の企業様を探していました。

M&Aをするうえで重要視したことを教えてください

花塚氏:
共に栄えるということですね。その企業にはその企業の歴史がありますし、ライズコーポレーションに関してもイーストライズにはない35年という歴史があって、それを培ってこられたノウハウもあるわけです。一緒にやっていく中で、それを共に活かし、共に栄える。共栄していけるかどうかを重視しています。あとは地方を元気にしたいということも非常に重視しています。

ライズコーポレーションを譲り受けようと思った理由を教えてください

花塚氏:
イーストライズにはもともと京都オフィスがありますが、何より私自身が日本の歴史が好きで、京都が好きなんです。2024年4月には伏見稲荷大社に大鳥居を奉納し、同年6月には「京都」を表すトップレベルドメイン「.kyoto」を取得しました。そんな矢先に北條さんから本件のご案内をいただきました。京都に拠点があり、一緒にやっていく上での相乗効果を見込めることは魅力でしたし、ご縁を感じました。実際に柳田さんにお会いすると印象はとても良く、いろんな場面で補完できるイメージも湧き、譲受意向はかたまりました。

成約に至るまでに印象深かったエピソードはありますか?

花塚氏:
先ほど柳田さんも仰っていましたが、二度にわたるトップ面談の延期でお会いするまでに時間を要しました。正直、柳田さんに嫌われているのではないかと思いました(笑)柳田さんが盛岡に来られて、やっとお会いできた時は安心しましたし、柳田さんの縁が盛岡であることに非常に驚きました。私は縁を大切にしているので、印象深かったです。実際にお会いしてからは北條さんの柔軟な対応もあり、スピーディーに物事が進み、約2か月半という速さで成約できたのも印象深いですね。

M&A後、変化したことはありますか?

花塚氏:
まだ成約して3か月ほどなので、これからです。展望としては、オフィス拡大を目指し、イーストライズの京都オフィスと統合してより大きい拠点を作り、新しい人材をどんどん受け入れていけるようにしたいです。プリント基板設計は、全てが同じではなく、違うところも非常に多いので、まずはその形作りをしている段階です。3カ年計画としては、今の売上の3倍を目指しています。

今後の目標やM&Aの方針について教えてください

花塚氏:
今後の目標はイーストライズ全体として積極果敢にM&Aに取り組んでいくという方針です。業種は問わず、補完できて、お互いにシナジーがある企業様とM&Aを積極的にやっていく予定で、今現在も検討しています。また、おかげさまで12期目も黒字着地が見えてきましたが、グループ全体で50億円を目指せるよう取り組んでいきたいです。

最後にM&Aを検討する経営者の方にメッセージをお願いします

柳田氏:
今回M&Aをしてアドバイザーは重要だと感じました。昨今M&Aの会社が非常に増えていますよね。私が検討を始めた6、7年前に比べて随分増えていますし、銀行や税理士事務所なども展開し始めたりしていると思います。それぞれ特徴や費用などが違うので、いろんな方のお話を聞いて、幅広く情報を集めて、自分にあった進め方、アドバイザーと進めていくことがいいと思います。動いてみないことにはわからないですし、アクションを起こすと意外と上手くいくかもしれないです。M&Aに少しでも興味があるのであれば、まずは一歩踏み出してみてもいいんじゃないかなと思います。
花塚氏:
やはりリスクを恐れずに積極果敢にM&Aをやっていく姿勢が大切だと思います。今後日本の経済は閉塞感があると言われていますが、M&Aをどんどん積極的にやることによって閉塞感がない、また新しい企業文化ができていくのではないかと思っています。日本は一気通貫の3000年の歴史を持つ世界的に見ると稀有な国家ですが、今後はいろいろな業種や事業が後継者不在や経営難などの問題で過渡期に立つと思います。M&Aは日本の経済を救う一助になるのではないかと思います。

ありがとうございました。

担当アドバイザーコメント

この度、京都府にて30年以上プリント基板の設計業務を営んでこられた株式会社ライズコーポレーション様と、岩手県に本社を構え全国で活躍する従業員様が在籍されているIT企業イーストライズ株式会社様とのM&Aをご支援させていただきました。

譲渡された柳田様は1990年に創業されてから着実にお取引先様への信頼を積み重ねてこられておりました。
それを裏付けるように、創業間もなく取引開始された企業様が今でも強固な関係でお仕事をご依頼されております。また、従業員様も長年在籍されているベテランの方々が多くを占めておりました。
このように取引先様、従業員様にとってもなくなってはいけない企業様になっておりましたが、柳田様も年齢を重ねるごとに次の承継課題を無視することができない状況になっておりました。
企業としての課題解消とオーナー個人としての将来設計を確りとヒアリングさせていただき、ご希望を叶えることができるようお相手様探しを開始させていただきました。

そのような中で譲受企業のイーストライズ株式会社花塚社長とお引き合わせさせていただきました。
インタビュー中においても笑いが絶えず、明るい空気感を生み出す花塚社長は人材採用・育成を始めとした組織作りを得意とされており、譲渡企業様の課題解消に寄与できる兆しがございました。
その後は双方の不思議なご縁が功を奏し、トラブルが起きることもなく無事にご成約を迎えることができました。

M&Aというと利益がいくら出ているとか、どの程度内部留保を有しているのかという財務内容に着目しがちです。
もちろん企業存続の面では利益を創出し続けていくことも重要な要素ではございますが、事業承継型のM&Aにおいてはそれだけでは成立しません。
双方の企業風土、当事者様同士のお人柄など定性面における要素がなければそもそもスタートしていなかったと感じております。
本件は双方のお人柄、企業戦略が見事に合致した素晴らしい事例となりました。
このような良縁を結ぶことができ担当者としてはこれ以上ない喜びを感じております。
双方の益々のご発展を祈念いたします。
北條 雄大
ヴァイスプレジデント北條 雄大
同志社大学経済学部卒業後、株式会社島津製作所に入社。
半導体やディスプレイ関係の最先端市場に対してソリューション営業を行い、新人賞と複数の営業表彰受賞。
東日本を中心に400社を超える中小製造業のお客様とやり取りする中で、業績不振の最中打開策が見つからず苦労されている経営者様を目の当たりにし、M&A業界に転身を決意。成長戦略としてのM&Aを広めるべく、ペアキャピタルでは製造業を中心に幅広い業種を担当。

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