Interview成約インタビュー

デジタルコンテンツカンパニーが急成長スタートアップと描く、成長戦略型M&A

デジタルコンテンツカンパニーが急成長スタートアップと描く、成長戦略型M&A
譲渡企業
Pomalo株式会社代表取締役社長 高橋 崇之 様
本社所在地
東京都渋谷区
事業内容
コンテンツ&マーケティング支援
譲渡理由
企業成長の為
譲受企業
株式会社FLUX代表取締役 永井 元治 様
本社所在地
東京都渋谷区
事業内容
業務オペレーションの最適化支援
譲受理由
事業拡大の為
Pomalo株式会社は、デジタルマーケティング及び編集のノウハウを活かしたコミュニケーション施策により、大手企業や有名ファッションブランドに対する支援実績を重ね成長を遂げてきた。事業をさらに成長させるべく、経営体制を強化する手段としてM&Aを選択。Pomaloをグループに迎え入れたのは、エンタープライズ企業向けに業務オペレーション最適化支援を行うスタートアップの株式会社FLUXだ。両社の代表に今回のM&Aについて話を伺った。

デジタルコンテンツにより企業と顧客のコミュニケーションを支えるPomalo

まずは高橋さん、御社の設立から現在に至るまでの経緯を教えてください

高橋氏:
デジタルマーケティングやECといった業界に長くいた私と、メディアの編集長を務めていた澄川が、お互いの経験を活かして会社を立ち上げようということで2016年に共同で創業しました。
最初の5年間は、ファッションブランドに対してECやマーケティングにおけるコンテンツの支援をしていました。当時はファッション業界がECを強化しようという時代でもありましたし、創業前からの人脈や信頼のもと、多くの有名企業やブランドを支援させていただきました。その5年間である程度の基盤が整えられた中、コロナやDXの波もうけてファッション以外の業種・業界に支援先を拡大し、現在に至ります。

どのような目的で今回のM&Aを行われたのでしょうか?

高橋氏:
2つありまして、1つは事業をさらに成長させることです。そのためには私一人で行っていた経営の体制を強化する必要があったので、私の他にも経営業務を担える方に入っていただきたいと考えていました。
もう1つは、組織や仕組みづくりを強化することです。起業から数年の間、順調に事業を伸ばすことができた一方で、そこで蓄積された知見やノウハウをさらに活かすための採用や仕組みの構築といった部分は、実のところかなり苦戦していました。事業のいわゆる「1→10」の部分を任せられる方が必要だと感じていました。

ペアキャピタルにお任せいただいた理由を教えてください

高橋氏:
担当いただいた藤井さんが前職でブランディングの業務に携わられていたこともあり、当社が本当に大事にしたいことをいち早く見抜いてくれました。「いくらのバリュエーションで」、「どうやって売り抜くか」など、M&Aの表面的な部分ではなく、事業の本質的な部分をご理解いただける方にお任せしたいと考えていた中で藤井さんと出会ったので、第一印象も非常に良かったです。

初回のご面談の時点ではM&Aに対してどのように考えられていましたか?

高橋氏:
M&Aに対しては企業成長の手段の1つとしてポジティブなイメージを持っていました。本当は5期目あたりで本格的に動きたいと考えていたのですが、コロナ禍で動くことができなかったので、初回面談の時点ではM&Aという手段は検討している状況でした。アフターコロナ期に入り各業界が改めてマーケティング活動を強化しようとしている中、いつ・どんなお相手にご一緒いただけるかが大事だと思っていたので、いち早く進めたいと考えていました。

お相手探しをする中で、大切にされたポイントはなんでしょうか?

高橋氏:
とにかく真面目な会社であることです。経営者の中にはいかに有名になるか、いかに稼ぐかを重視される方もいらっしゃると思いますが、私は事業に真っ直ぐ向き合う経営をしたいと考えています。経営陣が同じ考えを持つ会社であれば、何か起こった時でも本音でぶつかり合えると思うので、事業に対して真面目な会社を探していました。

お相手としてFLUXを選んだ決め手を教えてください

高橋氏:
永井さんがご自身で提案資料を用意してくださったことや、オンライン面談でお話しされる時の眼差しが、真っ直ぐで力強かったのが画面越しでもよく伝わってきたことから、M&Aに対する本気度を感じました。また、FLUXは設立から6期目(当時)で順調に成長していて、未上場のうちからM&Aをしようとする姿勢からも本気で事業成長に向き合った経営をされていると感じました。FLUXの経営陣とご一緒することで、経営者として刺激を受けながら高みに上がっていけると思ったので、グループインすることを決めました。

成約に至るまでに印象に残っているエピソードはありますか?

高橋氏:
初めてFLUXのオフィスにお邪魔した時です。永井さんに対する第一印象は、「上下関係を大事にしていて、リスペクトを持って接してくれる方」でした。当社のバリューの1つに「リスペクトを持った、土足力」というものがあります。リスペクトをしつつも踏み込む勇気は必要で、多少の摩擦や意見の衝突が起きたとしてもそれが成長に繋がると考えています。FLUXオフィスにはじめてお邪魔してお話した際に、永井さんはこの上下関係を大事にしながら、しっかり踏み込み本気の議論をする同じ価値観をお持ちであることを感じたことは、とても印象に残っています。

ご従業員様に本件の開示をしたときの反応はいかがでしたか?

高橋氏:
まず、共同創業者の澄川には元々全てを共有しており、感性や直感を大事にしている彼女が、戦略支援などビジネスの上流支援している企業にグループインすることに多少不安はあったと思います。その澄川に対しては、Pomaloとしての感性や大事にしていることを理解してくれる相手かどうかは私の目でしっかり確認すると伝えており、本件についてもその面は問題ないことを説明し理解してくれました。従業員に対してはクロージングの数日前に開示しましたが、私が一人で経営の大部分を担っていることは知っていたので、本気で相談できて頼れる会社が見つかって良かったと、安心してくれた様子でした。

M&A後、変化したことはありますか?

高橋氏:
これまで一人経営だったことでマイペースになってしまう部分もあったのですが、良い意味でおしりを叩いてくれる存在ができたおかげで、久しぶりにトップスピードで仕事ができていると感じています。常にバランスを意識しながら意思決定をしなければならないという精神的な負担が軽くなったのも嬉しいです。スピーディーに仕事ができている今の状況が好きなので、良いアドレナリンが出ているというのが私個人の中で起きている変化です。
会社としては、FLUXから2名の取締役が就任し、顧客の紹介や共同提案を早速開始し、営業・採用を中心に内部の組織化や仕組み化を推進してくれています。また、従業員も取締役以外のFLUXから支援してくれるメンバーに良い刺激を受けているようで、マインドの変化も大きいと感じています。会社や事業をもっと成長させていくぞ、という気持ちの変化が出てきていることを実感しています。

今後の目標や展望について教えてください

高橋氏:
私個人としては、経営者としての次のステージに進めるようにさらに成長したいと思っています。
事業に関しては、クリエイティブやコンテンツは今後AI等の技術によって、よりコンビニエンスなものになっていくと考えています。その変化の中でも、技術を活かしクリエイティブやコンテンツの面白さも理解している、その代表的な企業といえば当社と言われるような唯一無二の会社を目指したいと考えています。

事業推進支援のプロフェッショナルとして急成長を遂げるFLUX

続きまして永井さん、御社の事業内容を教えてください

永井氏:
日本を代表するエンタープライズ企業向けに、DX、メディア・マーケティング、HRの3つの領域を中心とした事業推進支援を行っています。当初はメディア・マーケティング領域をメインに事業をスタートしました。現在は業務オペレーション最適化による事業推進支援を行い、これまでに1,000社以上のお客様に対してサービスを提供してまいりました。

今回のM&Aの目的について教えてください

永井氏:
未上場の段階で成長戦略としてM&Aを行うことは、創業時から決めていました。アメリカやヨーロッパなどの海外では、スタートアップ企業が資金調達をしたらM&Aに投資するのが主流です。日本でも上場企業がM&Aを複数行っている例はありますが、未上場の会社ではまだ少ないのが現状です。シナジーのある会社を迎え入れて一緒に事業を伸ばしていく戦略として、当社もM&Aには積極的に取り組んでいこうと考えていました。

M&Aをする上で、どのようなことを重要視されましたか?

永井氏:
最も重要視していたのはカルチャーフィットすることです。違う会社なので完全にフィットする必要はありませんが、当社のバリューに共感いただきつつ、お互いのバリューを尊重できる会社だと良いなと思っていました。
商品についても、私たちの言葉で・当社の顧客に対して販売できるサービスであるかは重視していました。営業によりトップラインを伸ばすことが当社の提供できるバリューだと考えた時に、サービスのどこに強みがあって、それを自分たちの言葉でも売れるのかどうかは非常に重要なポイントでした。

PomaloをM&A対象企業として選んだ理由を教えてください

永井氏:
話し合いを重ねていく中で、高橋さんの経営者としての真摯な姿勢やグロースマインドセットが見えてきて、一緒に経営していくイメージが明確になりました。クリエイティブ業界の方は右脳思考の方が多いと思いますが、高橋さんは両方兼ね備えていて、むしろ左脳寄りでビジネスマインドが強かったのがポジティブサプライズでした。事業をどう伸ばすかを第一に考えられている印象だったので、私たちともフィットするだろうと感じました。
事業の面で言うと、Pomaloのサービスはどこが強みなのかが明確でしたし、クライアントも当社と同じくエンタープライズ企業が多いので、同じような横展開をしたらより伸びていくだろうと感じ、サービスのシナジーも期待できると思いました。

M&A後のご状況について教えてください

永井氏:
現在はPMIをしながら事業をどうグロースさせていくかを考えている段階ですが、今後どうしていくべきか最近見えてきたような気がしています。そういった意味では、M&Aによる成長戦略の土台を今まさにPomaloと一緒に作っているところだと思います。
社内では全社総会で本件について発表したところ、M&Aによって今後グループが拡大していく認識が従業員にも伝わり、グループ企業と一緒に成長していこうというモチベーションが高まったと感じています。
事業の面では、常に一緒に案件の提案を行い、アクション数を増やしています。元々は営業も高橋さんがほとんど一人でされていましたが、そこをFLUXの人材でカバーすることでアクション数を増やしているので、Pomaloのサービスは既に差別化されていることもあって今後さらに伸びていくだろうと期待しています。

今後の目標やM&Aに関する方針はございますか?

永井氏:
Pomaloをお迎えしたことで設定した数値目標があるので、まずはその目標を達成することに尽きると考えています。そのためのオペレーションの構築に、いかにFLUXのリソースを活用できるかが重要だと思いますし、一緒に目標を達成してPomaloのサービスをより多くの方に使ってもらうことを目指しています。
FLUXとしては、既存のサービスラインナップに安定感が出てきたところなので、それをいかに早く、精度高くスケールさせていくかの設計に力を入れていきたいです。
M&Aについては今後も行っていく方針ですが、Pomaloのように一緒になることで価値が出せる会社があれば、ぜひご一緒したいと考えています。

最後に、M&Aを検討する経営者の方にメッセージをお願いします

高橋氏:
M&Aは会社の未来を本気で考える経営者にとっては非常に良い手段だと思うので、事業を伸ばしたいのであれば手段の1つとして考えておくと良いと思います。ただ、一緒になった先に様々な壁にぶつかることもあると思うので、ともに乗り越えられる相手かどうかは、時間がかかってもしっかり見極めるべきだと思います。先を見据えて心が通じ合えるような相手を見つけていただきたいと思います。
永井氏:
会社にはそれぞれ色々な目標があると思いますが、自社だけで達成するのではなく、お相手企業と一緒に達成できるのがM&Aの魅力だと感じています。M&Aをすることで、自分が描く理想像に対してより早く、より大きなスケールで実現できることもあると思うので、今まで考えていなかった方も検討してみれば可能性が広がるのではないかと思います。

ありがとうございました。

担当アドバイザーコメント

一般的にM&Aというと後継者不在の問題が取りざたされることが多いですが、今回は事業成長を契機とした成長戦略型M&Aとして、古くからあるM&Aのイメージを払拭する1つの好事例になったのではないかと考えております。
仲介業者という立場として最終的にFLUX社とお引き合わせさせていただくまでに、Pomalo社には複数の企業とのトップ面談を実施いただきましたが、どの会社と比べても圧倒的に成長を期待させてくれる迫力があったと記憶に残っております。実際にご面談をした際には、高橋様もシナジーはもちろんのこと永井様を含めた経営陣のお人柄や若いエネルギーにもとても惹かれたご様子で、これまでに見せていなかった期待に満ちた目をされていたのを覚えております。
本件をご支援させていただいた当初は、まさか対象会社よりも業歴が浅く、若い経営者が運営される会社様とご一緒になることは想像もしておりませんでしたし、本件はいい意味で各社の予想を超えたご縁を創出することができたディールだと考えております。私自身もそんなM&Aに携われたことを心より嬉しく感じておりますし、今後両社がご一緒になることで予想を超えてどこまで成長していくのかを楽しみに見守っていきたいと考えております。
藤井 航平
アソシエイト藤井 航平
早稲田大学卒業後、大手印刷会社に新卒で入社。
マーケティング部にて食品系メーカーを中心に組織戦略から商品開発までを一気通貫してサポートした後、飲料・不動産・自動車・航空・金融など幅広い業界の企業ブランディングおよび地方創生支援に従事。
ブランディングにおける経営戦略および地方でのM&Aによる事業承継の重要性を実感し、2022年、ペアキャピタルに入社し現在に至る。

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